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2023/01/13

チン電ツアーこぼれ話1『講談師・玉田玉秀斎さん』

構成・文/団田芳子



新年明けましておめでとうございます。

ミニコミ誌『こはま日和』第2号、ご覧いただけたでしょうか。

粉浜商店街の各商店や掲示板前のラック、住吉大社さん、阪堺電車の天王寺駅前停留所などに置いていただいております。

プレゼントもありますので、ぜひご応募くださいね!!




こはま日和2号



やまつ辻田唐辛子3種セット

読者プレゼントは「やまつ辻田」の唐辛子3種セットを5名様に









さて、今回から、紙面に書ききれなかったこぼれ話をお届け。

第2号の目玉企画は、「チン電のって、こはま~オリジナル講談を聞きながら~」。
参加者20名の中から、今回は、講談師・玉田玉秀斎さんをピックアップしてご紹介。





講談師 玉田玉秀斎さん




講談って聞いたことありますか?
近ごろは、落語を聞く若者が増えているとかニュースで耳にしますが。

「落語を聞くとダメになる。講談を聞くとタメになると申します」と、チン電の中で、玉秀斎さんが笑いを取っていましたが。

そもそも落語は、市井のひとが、日常のおもしろ可笑しい話を持ち寄って笑い合うことから始まったもの。

対して、講談は、武士や学者、僧、神官などの知識人が「太平記」など昔からある本を読み聞かせることから始まっているとか。

起源から違うのですね。

そして、ただ本を読み聞かせる朗読とは違って、内容を面白く解説したり、解釈を入れて語り聞かせるのが講談。

楽しみながら歴史や道徳を学べるのが講談なのです。





チン電車内で講談




だから。

玉秀斎さんによる、チン電ツアーでのオリジナル講談も「へぇ」とか「ほぉ」とかみんなが感心するような歴史トリビアがいっぱい。

なおかつ「ウソやん!」と笑い転げるような話も織り交ぜつつで、大いにタメになり、楽しませていただきました。


たとえば、誌面で紹介したのは、『忠臣蔵』の名台詞「男でござる」で有名な義商・天野屋利兵衛の物語。
舞台となった料亭『三文字屋』が、今は住吉警察署だという話。

そのほかにも、真田幸村の話や、後藤又兵衛と徳川家康が住吉の地でニアミスしていたとか…。

「ん?習った史実と違う? 教科書を信じるか、講談師を信じるかは、皆さまのご自由です」

と玉秀斎さんが澄まして言うので、爆笑をさらっていました。




講談師 玉田玉秀斎さん





そんな講談師・玉田玉秀斎さん。

平野区で生まれ、大阪市立大学法学部卒業という経歴の持ち主。

高校時代には、ロータリー青少年交換留学生としてスウェーデンに1年留学。その経験を活かした講談の外国語化がライフワークで、外国語を操る講談師としても有名です。


ジャズやアコーディオンなどとの音楽コラボ講談、

ググる講談(即興講談)、

ホームレス経験者への取材をもとにしたビッグイシュー講談など、新作も多数創作。





1/18(水)18:30〜ブリーゼプラザJAZZ講談のチラシ

1/18(水)18:30〜ブリーゼプラザでJAZZ講談!当日券あり。(玉秀斎さんのフェイスブックより画像お借りしました)





チン電車内での自己紹介もメチャクチャ面白かったのですが、これは、実際に玉秀斎さんの講談を聞く機会まで取っておくほうが良さそうですね。



講談師 玉田玉秀斎さん




通常、釈台という机を前に置き、手には和紙で作った張り扇(おうぎ)なるものを持ち、釈台を叩いて語る調子を取ったりします。

もちろん座って講釈をする芸ですが、チン電車内では、つり革につかまったりしつつ立ったまま。

途中、お茶の試飲のために持ち込んでいたポットを釈台代わりに叩き始めて、「これ、いいわー」とグンと名調子ぶりがアップした玉秀斎さん。

次回やるなら、必ずポットを用意しますね(笑)。





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チン電車庫で、線路切り替え中?の玉秀斎さん




住吉大社で、権禰宜・小出さんのお話に聞き入る玉田さん

住吉大社で、権禰宜・小出さんのお話に聞き入る玉秀斎さん




粉浜商店街 聖月寿司さんでランチ

商店街「聖月寿司」でランチ中





ツアーを終えての玉秀斎さんのご感想は―。

「チン電での講談は、これまでも何度かやってきましたが、今回は住吉、粉浜の物語を語る素晴らしい機会をいただき、ありがとうございました。粉浜商店街は初めてお伺いしたのですが、もの凄く魅力の詰まった商店街で驚きました。

また住吉大社の権禰宜の小出さんの境内ご案内もすごく面白くて、物語の力を改めて感じました。本当に面白い、楽しい時間でした。

あ、そうそう、チン電にポットがあって良かった~!」。




良き相棒のポット

良き相棒のポット





玉田玉秀斎 たまだぎょくしゅうさい





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2021/10/22

こはまの食卓〜第四弾

こはまの宝物で作る“こはまの食卓” ケの日とハレの日」で使った食材を購入したお店を紹介してきたいと思います!
撮影・小柴貴郎、文・小柴貴郎、団田芳子




『井川とうふ店』

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1999年、『おいしい大人の食マガジン あまから手帖』5月号で、粉浜商店街を取材したとき、この店の寄せざる豆腐を初めて食べて感動した。それ以上に、「取材か?カッコええなぁ」と隣近所の人にからかわれていた若き店主・井川清さんの印象が強かった。製麺所やら惣菜屋でも「うちの揚げは井川さんとこの」「井川さんの豆乳を使ってるよ」とあっちこっちで名前が出てきたこともよく覚えている。

そんな商店街のアイドル・井川クンも、「もう50才ですよ」。
相変わらず“ニイチャン”風イメージだが、その作り出す豆腐のクオリティはグンと上がっている。

「豆腐は、水とにがりと大豆で出来てる。とにかく大豆が決め手」と井川さん。

「僕の好みなんやけど、うちは宮城産メイン。北海道、滋賀、群馬、山形も使うけど、南の方はタンパク質がしっかりしてて豆腐もしっかりするけど味気がない。北の大豆は甘いけど、豆腐がグニャグニャと軟らかくなりすぎる。宮城はちょうどバランスがいい。まあ細かく言うと契約栽培の農家さんの隣合わせの畑でもAとBがあるとすると味が違う。僕はAの畑を指定したりします」。まるで銘醸ワインを作るブドウのテロワールみたい。


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昨年は日照不足で大豆は不作だったらしい。「大豆が良いときは少々ざっくりやっても美味しく出来るんやけどね。悪いときは針の穴を通すようにピンポイントを突かなあかん。それはそれで面白いねん。もちろん良い大豆を仕入れることができることも腕のウチ。でも、出来のよくない大豆で、それでも美味しく良い豆腐を作ろうと毎日鍛錬することで、品評会で差が出る」。

おお、まるで人間国宝さんの有り難いお言葉のように沁みる。


今日はイマイチやったなと思うと、明日はもっと美味しく作りたい、早くやりたいと心がはやるのだそう。すっかり職人はだしの井川さんだが、18才で家業を継いだときには、さほどの覚悟はしていなかったよう。

「オヤジが膝の手術をすることになって、『半年は入院する。お前がやらんなら店は畳む』って言われて」。

『井川とうふ店』は、創業100年を超える老舗なのだ。自分のせいでおいそれと潰すわけにはいかない。「それで腹を決めてん。けど、最初はおもろないなと思ってた。オヤジには『頑張ったら頑張っただけ給料上げたる』言われてたけど、上がらんし」。



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しばらく後、豆腐製造業者の組合に青年部が発足。その仲間のひとりが作った豆腐を食べてビックリした。

「めちゃくちゃ美味しい!どうやって作ってんのと訊いたら、見に来いやって言ってもらえて」。そこで得た知識ややり方を自分なりに試すうち、完成したのが“すくい豆腐”だった。「まだ世の中にあんまり出回ってなかったから爆発的に売れた。そっから面白くなったわ」。



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豆腐作りに開眼した20才の井川クン。以来、豆腐品評会近畿大会では優勝の常連組。全国でもすくい豆腐が3位、徳松豆腐は2位の栄冠に輝いている。

彼の豆腐を求めて、遠方から通う客もいるほどだ。だからといって値上げもしない。「大豆はもう3年前から高騰しっぱなしやねんけど」と言いつつ、10年以上値段は据え置き、大きさを変えるなんて姑息なこともしていない。

「贅沢品にしたないねん」。大阪下町の豆腐屋としての矜持を感じさせて何ともニクイ台詞!

商店街のアイドルだった井川さんは、今や商店街のヒーローだ!


2番街 9:00~18:30 木曜休み






『木下陶器店』

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「親父が身体弱かったから、ボクが高校の頃から帳面つけて店の手伝いしとったんや」というこの道半世紀以上の超ベテランのご店主が、岐阜の産地や名古屋の見本市へ足を運んで選りすぐった陶器がズラリと並ぶ。


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美濃焼や有田焼の普段使いの食器がメインで、手に持つとその軽さに「おっ」と声を上げてしまう軽量ラーメン鉢や、つやつやごはんが炊ける萬古焼の炊飯土鍋、小ぶりでかわいい図柄の子ども用食器など、あったら嬉しいアイテムも。

「器はみな同じように見えるけど、たくさん仕入れるとほんの少しいがんだものとか、ちびっとだけ釉薬のムラがあるものとかどうしても混じっとるんや。でも普通に使えるし、パッと見じゃわからへん。そういうものを安ぅで出しとんねん」というお値打ち品なんぞは、お買い物上手の奥さん、狙い目ですよ!


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3番街 10:30~18:00 水曜休み





『ハニーズ』

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インテリア用品や服飾雑貨、日用品など、倉庫みたいに商品がぎっしりと並ぶ店頭。そのあちこちに貼られた「8割引」「9割引」というポップに目を疑う。

市価の8~9割じゃなくて、1~2割という驚きの爆安価格は、業者相手から小売りに転身した店の歴史と信頼があってこそ。


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国産高級い草のラグマット、ホテル仕様の寝間着など手に入りにくい品も入荷し、「一品ものが多いから早い者勝ち。後で来て〝あん時のアレないんか?〟言われてもあとの祭りや」とご店主がおっしゃるように一期一会の品揃え。

目を惹くのは地元発祥の敷物メーカーで、国会議事堂の赤絨毯から街を走る電車のいすまで手がける世界的企業、住江織物のアイテム。しかも激安で販売中。色合いも触り心地もホームセンターのものとは別次元。

「グレードは日本一や。うちじゃ安いけど、安物ちゃうで!」

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ハニーズ
駅前通り商店街 10:00~18:30 不定休





『華屋』

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もっといろいろなお花を知ってもらいたいと、ちょっと珍しい品種も店先を飾る。

もちろん品質も確かで、ランクの良いものを取り揃えている。若い女性ならではの感性を生かしたアレンジメントやラッピングはキュート。LINEでも予約OK。手づくりのドライフラワーや色鮮やかなハーバリウムもオシャレ。


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店を切り盛りする増田さんは、落ち込んだ気持ちを花に癒やされた経験から生花業界を志したというピュアなハートの持ち主。「早い時間だとたくさんお花があるので」と、夜も明けきらぬうちから卸売り市場へ向かうのが楽しいのだとか。

「仕入れはまるで宝探し。胸がキュンとするお花を入荷するんですよ!お客様の手に渡るときはお嫁に送り出すような気持ちになって…」と可憐にほころぶ一輪の笑顔に、粉浜のみんなも胸キュンキュン。


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3番街 9:00~18:00 不定休




次回から、新しいシリーズがはじまります!
乞うご期待!



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2021/10/15

こはまの食卓〜第三弾

粉浜の宝物で作る“こはまの食卓” ケの日とハレの日」で使った食材を購入したお店を紹介してきたいと思います!
撮影・小柴貴郎、文・小柴貴郎、団田芳子



『赤吉商店』

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「ウワーッ目がピカピカ!」と、思わず声が出た。氷を敷き詰めた上に、ドドンと一尾丸っぽの魚たちが艶やかに並んでいる。

「魚をその姿のままで売るのは私のこだわり。昔ながらの魚屋でいたいと思ってるよって」と、当主・赤尾吉松さん。御年77歳。

「うちのオジイチャンが、今の住吉警察署の辺でカマボコ屋をやってて。それから父親がここで魚屋を始めたんや。僕が生まれた頃にはこっちへ移ってたから、80年ほども前かな」。

昭和26年に、父君が亡くなってからは、あとを母君が継いだ。「頑張って大学まで行かしてくれた。僕は大学卒業してから店に入ったんや」。

以来、毎朝4時半に中央卸売市場へ。「22時半には寝るけど、睡眠はまぁ5-6時間。受験生のときから60年。もう慣れてるわ」。


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市場通いは50年を超えている。しっかり養った目利きで選んだ魚は鮮度抜群だ。

「パックやったら、ハイとお渡しするだけでお待たせもせんけども」。魚は切ると鮮度はどんどん落ちていく。「それにね、若い人は鰆がどんな魚か、ハモが長い魚やということも知りはれへんやろ」。

そう、塩鮭の切り身が海で泳いでいると思っている子供がいるご時世だ。
「やっぱり魚の姿を見せるのが、魚屋の原点やと思うねん。せやから僕の代はこのままで」。



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10数年前から後継ぎとして入ってくれている息子さんを、頼もしそうに見る目は優しい。息子さんも同じ想いでいるのではなかろうか。

丸っぽの魚は、薄造りにも切り身にも、注文に応じて捌いてくれる。捌き立ての鯛を薄造りにしてもらってカルパッチョにしたら、やっぱり美味しい。


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4番街 9:00~17:00頃 木曜休み






『牛良(ぎゅうよし)』

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夕暮れ時ともなると、必ずワイワイと人だかりが出来ている。『牛良』名物のタイムセールだ。豚肉は20%、牛肉は10%割引になる。

「その日に売り尽くしたいからね」とは、2代目・松岡伸六さん。何と筆者の弟の同級生。「東粉浜小学校のときの、シンロク君が社長さんかぁ?!」と弟も驚いておりました。

昭和42年に南海センターで創業し、昭和61年に本通商店街に移転。半世紀以上、粉浜の皆さんの胃袋を鷲づかみにしてきた精肉店だ。高級な黒毛和牛肉から、毎日の食卓の強い味方になってくれる激安肉まで、ズラリと揃っている。

豚こまなんて100g68円!!「これは赤字。でもお客さんに還元しよう精神で」と2代目。しかも、激安でも美味しい。



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美味しいワケ・安いワケは、南港にある食肉卸売市場にて競りおろしているから。

枝肉と呼ばれる骨付きの塊肉を店で捌く。特に牛肉は「オヤジのこだわりで、メスしか買わない。やっぱり脂も甘いし、スジまで柔らかいんです」。

お店で作るローストビーフやローストチキンも大人気。フライパンでガーリック少々、塩胡椒のみで焼くというシンプルさが、肉の旨みをダイレクトに届ける。

「旨いでしょ!」と笑う松岡さんは、大の肉好き。野菜も果物も魚もほとんど食べないというほど。これほどの肉好きが売るお肉、美味しいはずだわ。


牛良(ぎゅうよし)
本通商店街 9:00~19:00 木曜休み





『青果 おか本』

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キュウリにトマトにレタスに玉葱。色とりどり、艶やかな野菜や果物が並んでいる。いつも思うのだけど、この陳列って毎日、大変やんなと。

「まぁ2時間くらい掛かるわな」と、事も無げに店主の岡本文夫さん。毎朝7時半から並べていくらしい。早起きですねと言ったら「家は4時半に出るよ」と。

東部市場へ仕入れに行くのは夜明け前なのだという。何時に寝るのと訊いたら「8時」。

ヒエーッ!八百屋さん、魚屋さん、豆腐屋さん、商店街はみんな早起きだ。店では1日中ラジオが鳴っている。「世の中のことは、ラジオのニュースで聴くんや」。


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『おか本』は、45年ほど前からここで青果を商っている。

「父親が苅田の方で農家をしててね。最初は、採れた野菜をリヤカーで売り歩いてたって聞いてるわ。もう70年ぐらい前のことやけどな」。

早起きの岡本さんの趣味はゴルフ。噂によると、シングルの腕前で、息子さんはプロゴルファーだとか。


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3番街 10:00~17:00 木曜休み





『コロッケ・すし工房 内山』

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戦後間もなく精肉店として創業、2017年に代替わりしてデリカ店へと業態転換した商店街のオープンキッチン。

伝統を受け継ぐコロッケは健在。やわらかくシルキーな舌触りの生地が、口いっぱいにお肉の旨味と幸せを運んでくれる。しかもリーズナブルだから、飛ぶように売れる。


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一方でお寿司もオススメ。うなぎ、かんぴょう、しいたけなど7つの具材がハーモニーを奏でる「うまか巻き」は、割烹、居酒屋、寿司店で研鑽を積んできた叩き上げの料理人でもある3代目の自信作。

包丁一本晒に巻いて、腕を磨いて粉浜に戻りゃ、確かな仕事で街のグルメたちを唸らせる。


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5番街 9:00~18:00 木曜休み






『さんツボンヌ』

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店名も可愛けりゃお店も可愛い。パンも可愛い。チン電通りの小さなパン屋さんだ。
ショーケースも小さいけれど、ビックリするほどたくさんの種類のパンが並んでいる。


「毎日40種くらい焼いてます」とは、松本知子さん。姉の典子さんと母の千寿子さんの3人で営む“3坪”のパン屋さんだ。お姉さんが主に焼き窯担当。妹さんが成形と販売担当、母上がお客様とのオシャベリ担当(?)で、2012年にオープンした。


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「住吉大社の近くで父がパン屋をしていたんです」。その頃は、家族みんなでパン作りを手伝っていたのだとか。

大人になって、姉妹はそれぞれ異なる仕事をしていたが。ある日、お姉さんが、「いい場所見つけた!」と言い出した。姉妹ともに胸の内ではもう一度パン屋をやりたいという気持ちが膨らんでいたらしい。

「実は兄が大工で」、可愛いお店はお兄さんが作ってくれたのだそう。ニスも自分たちで掛けて、窓枠は赤く塗った。小さな店なので、パンは外に面したショーケースの中に並べ、窓越しに受け渡しする対面式だ。

種類が多いのは、「色んなパンを手軽な価格で食べて欲しいなと思って」。小ぶりだから、2つ3つと食べられると、ことに女性に好評だ。


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食パン、フランスパン、おかずパン、甘いパン、曜日限定のものも含め、毎日40種も焼くのは、すごく手間暇が掛かりそう。「はい、朝は2時から仕込みを始めます」。2時って、朝というか夜中!

それから、開店の10時頃に第一段が焼き上がる。さらに時間をずらして少しずつ入れ替わりで焼きたてパンが並ぶ。

「窯も小さいので、ちょっどずつしか作れないんです」。時間帯によって焼き上がるパンが異なるので、オープンから9年間、ずっと来てくれている人も「あれ?このパン、初めて」と驚くことがあるらしい。


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「『よく休むなぁ』と言われてしまいますが、全休は、3連休する月に1日だけなんですよー」。あとは姉妹が全力で、仕込みに勤しんでいる。

東粉浜3-25-1 10:00~18:30(早い時間に売り切れる場合も)
水木、第3金曜休み。




まだまだ、「粉浜の宝物」続きます!


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2021/10/08

こはまの食卓〜第二弾

食材を購入したお店を紹介してきたいと思います!
撮影・小柴貴郎、文・小柴貴郎、団田芳子



『福田蒲鉾店』

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御年81歳のご主人が「ワシが子どものころからおる」という職人さんと2人で、昔ながらの手仕事を頑なに守るありがたい老舗。


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商店街から少し路地を入ったところの工房を見せてもらうと、「40年以上使うとるんとちゃうか」という年季の入った大きな石臼が。

いまはステンレスが主流だが、石臼で仕込むとよくすれて、熱を持ちにくいから質も変化しにくいそうで、北海道から仕入れたスケソウダラの旨味も際立つ。


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このすり身を手巻き・手焼きした竹輪になる。たっぷりのたまねぎを混ぜて揚げたたまねぎ天も大人気。

夏場は冷やしてわさび醤油で食べる大阪ならではの「あんぺい」、冬場は種類いろいろおでんだねが店頭を彩る。


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超ベテランの技から生まれるほんまもん、戦前の創業から85年以上変わらぬ「住吉名物」の味をぜひ。


福田蒲鉾店
2番街 8:00~17:00 木曜・金曜休み






『藤原富寿堂』

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オシャレな外観にケーキ屋さんかと思いきや、実は和菓子屋さん。

一番人気は「天」に「点」をくっつけて「あまた」と読むどら焼き。

π(パイ)で円周を計算したかのように端ギリギリまで詰め込んだたっぷりの自家炊きあんこをむぎゅっと挟むのは、パイのように香ばしくやわらかい生地で、岩手県産小麦ならではの弾力と風味、甘さの中にもほのかなしょっぱさがあってクセになる味だ。


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村雨や桜餅など定番のほか、夏は葛まんじゅうやマスカット大福、冬は生チョコ餅やイチゴ大福ほか季節の和菓子もいろいろ。

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目鼻の先の粉浜小学校出身のご主人も、お菓子に負けず劣らず甘いマスク。
「シンプルな原材料で、地元に愛される和菓子を」と、今日も朝早くから工房で腕を振るう。

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藤原福寿堂
5番街 9:00~18:00 木曜休み





『楽庵』

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晩ご飯の仕度が面倒。でも家庭的な料理が食べたい…。

そんな相矛盾する心持ちになった時は、楽庵で家事を楽しよう。ぐつぐつ煮込んだおでんは、冬はもちろん真夏でも売れる看板メニュー。

鶏ガラを4時間煮込んでじっくり引き出した旨味が具にじんわりと染み、おかずにも酒肴にもピッタリ。だいこんやじゃがいものほか、『井川とうふ店』から仕入れた厚揚げも人気だとか。


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大鍋で煮る煮物いろいろ、やさしい酸味の酢の物、揚げたてコロッケなどなど、キャリア20年以上、笑顔がステキな大将が手間ひま惜しまず仕込んだ手づくりのお惣菜がズラリと並んで目移りする。

味の決め手は毎朝とる合わせだし。その風味を満喫するなら、暑い季節は卵豆腐、寒い時期には茶碗蒸しがオススメ。

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楽庵
駅前通り商店街 9:00~19:00 火曜休み






『南海園』

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生花店が多い粉浜商店街だが、中でもここは最古参。昔から「商売は正直に」と入荷日を公表、その日の朝ともなれば行列ができる。


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100年以上掲げる看板を守る4代目は、「先代の父に厳しく仕込まれまして。

仕事は〝見て覚えろ〟で、ちょっとでも間違えると容赦なくハサミが飛んで来たもんですわ。今の時代じゃパワハラっすよ(笑)」と、しっかりとノウハウを叩き込まれた花のプロフェッショナル。

その鋭い目利きと適切な仕上げで、花々はフレッシュでいきいき長持ち。


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仏花やしきみなどは「手を合わせるものでお金儲けはアカン」という父の哲学を受け継ぎ、何十年も質を落とさず価格は上げずで「しんどいですけど限界まで頑張ります」。

一方でステイホームのご時世に合わせ、そのままテーブルなどに飾れるスタンドブーケなど新しい商品も創作し、バランス良く不易流行を実践。

そのひたむきな姿勢に信頼を寄せて、遠方からやって来る常連さんも多い。


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南海園
2番街 9:00~18:00 木曜休み



まだまだ、「粉浜の宝物」続きます!


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2021/10/02

こはまの食卓〜第一弾

今回はその食卓に使った食材を購入したお店を紹介してきたいと思います!
撮影・小柴貴郎、文・小柴貴郎、団田芳子


『寺田園茶舗』

寺田園茶舗01

「美味しいお茶、一口どうですか」。

紙コップで試飲した煎茶は、緑の風のように爽やか。「飲んだら美味しさが分かってもらえるでしょ」と寺田均さん。名刺には茶審査技術6段とある。それがどれほどスゴイ資格かは知らないけれど。

生野にある創業100年超えの本店『銘茶問屋 寺田園茶舗』の3代目。「子供頃、冷蔵庫に焙じ茶が冷やしてあって、ほかの子みたいに麦茶が飲みたかったなぁ」とお茶屋さんあるあるを穏やかに話してくれた。


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知り合いに声を掛けられて粉浜商店街に出店したのは2013年頃のこと。

「うちは宇治茶メイン。一番大事にしてるのはこう淹れたら美味しいという方法をきちんとお伝えすることです」という寺田さん。

どら焼きに合うお茶、甘いお茶、渋いの、がぶがぶ飲みたいなどなど、リクエストすれば「ほんならこれ」とピッタリの茶葉を選んで、淹れ方を指南してくれる頼もしい粉浜の茶師だ。

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ペットボトルが主流になって、茶葉で淹れるお茶は日常のものではなくなりつつあると嘆きつつも、特別なひとときとしてお茶を淹れて飲む人のために、少量(30―50gほど)の販売も。

「ティーバックだけど、葉っぱで淹れるより美味しい」という中尾弘史さんのティーバックは、粉茶ではなく茶葉を細かく刻んであるらしい。お湯を注いで1分で、本格派の味わい。


1番街 10:00~18:00 木曜休み。







『おかずのじゅん』

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冷蔵ケースにサラダや煮物、コロッケなど揚げたても大皿に盛られている。和洋様々に、バラエティーに富んだおかずがズラリ。

「この頃人気は、冷やし茶碗蒸しかな」。べっこう餡が掛かっていて、具も色々入っていて、確かに美味しい。

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「母がフライもん担当。僕は煮炊きもん」と安藤潤さん。190㎝110㎏の巨体に、思わずおおっと見上げる。

「清原と身長体重同じなんですよ」と微笑む顔はふんわり優しく人懐っこい。


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「お惣菜屋は、昔は煮豆屋って言うたんやで」と物知りのお母さん、前田千世子さん。「一昔前は和歌山出身の人が多かった」とも。煮豆屋で大成功を収めた人が故郷に錦を飾り、それ続けとばかり、大勢が大阪で煮豆屋になったのだと言う。

「私の中学の同級生は半分が煮豆屋になったんや」とお母さん。和歌山から尼崎へ、西宮、九条、堺、阿倍野など、転々としながらの煮豆屋人生譚は、めっちゃ面白い。

「そのお陰で、僕は4回転校してるけど」と潤さんがポツリ。親子の掛け合い漫才のような会話に笑ってしまった。


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粉浜には10年前から出店。「うの花やひじき煮のおからや揚げは井川さんとこのんです」と、すっかり粉浜商店街にも馴染んでいるよう。

3番街 10:30~18:00 木曜休み





『Side dish わ』

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栄養士として幼稚園の献立を立て、調理をしていた若林香苗さんが、2017年に開いたお惣菜の店だ。

お店を開くに当たって、あちこちの商店街を見て歩いたが、「浜口で育って、粉浜商店街は母とよく来ていたし、やっぱりここが落ち着くなと思って」。

毎日、バラエティーに富んだお惣菜15種を作る!という目標を己に課しているのだそう。そんなおかずを求めて、毎日来てくれる人も多く、顔馴染みの常連さんも多いよう。

「地元のおじいちゃん、おばあちゃんとオシャベリするのも楽しいんです」。


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定番のサバの味噌煮、ポテトサラダ、五目大豆など、若林さんの醸し出す雰囲気そのままにふんわり優しい味。野菜は、羽曳野の道の駅で農家が持ち込む産直野菜などをメインに使う。

人気のポテサラは、ゆで卵にロースハム、キューリ、ニンジン、コーンを加えてメークインのジャガイモで。マヨネーズにオリジナルドレッシングを加えて、「わ」の味に。


栄養士としてお勤め時代は忙しすぎたから。「今は子供に『行ってらっしゃい』が言えるのが幸せ」という2人のお子さんのお母さんでもある。


5番街 10:00~16:00か17:00、木曜、祝日休み







『伊勢の磯屋』

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大きな樽に、白菜、キューリ、ナスが色よく漬けられている。秋ならカブラや日野菜、夏はウリと季節の野菜がズラリと並ぶ。乳酸菌イキイキの美味しい漬物だ。


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「伊勢から来てはる漬物屋さん」とお馴染みの店。店頭に立つ荻田浩美さんによると、「今86才の父の父、つまり私のお祖父ちゃんが、自分とこの畑で採れた野菜を漬物にして、まだ食糧難だった大阪に持ち込んで売り始めたのが昭和30年代」とのことだから、半世紀以上の歴史ある店だ。


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「今は、うちの畑のほかに契約栽培の畑からも野菜を仕入れて」、庄内、千林、駒川にも店を出している。時には、三重県のトマトなど生鮮野菜も並べる。梅干し、伊勢納豆のファンも多いよう。

3番街 9:00~17:30 日曜休み




次回も「粉浜の宝物」続きます!




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