上を向いて歩こう2
構成・文/団田芳子
粉浜商店街の歴史を看板に見る!
「上を向いて歩こう」シリーズ第2弾です。
ビックリ面白系
「荒井はきもの店」
ちょっと分かりづらいかもですが。
かなり高い位置のガラスの箱の中に、巨大な――下駄が!
写真を拡大すると鼻緒に何やら文字が見える。
「荒井商店 電住吉五九〇九」?
「昔の住所は住吉やったからね」とご主人の荒井逸郎さん。
60年ほど前に先代が設置したものだとか。
「はめ込みガラスやから掃除をするとなれば大仕事でねえ。特大下駄は、ちゃんと台は桐で、鼻緒は正絹なんですよ」とは、奥さんの泰子さん。
「桐は箪笥でも高級品でしょ。柔らかくて軽くて、割れるときも細かく割れるので下駄の材としても一級品。うちの台は98%が桐材です」。
えーと、足を載せる本体を“台”と呼ぶのですね? 基本的なことも何も知らなくてスンマセン!
「私も27才で嫁いでくるまでは、下駄のことなんて何にも知らなかったんですよー」とカラカラと笑う明るい泰子さんに救われる。この人なら、初心者でも安心して色々訊けるんだろうな。
「うちは玉出で創業して、その次男坊が戦後昭和20年代にここを始めたんです」とご主人。
「私が嫁いで来た頃は、運動靴も置いてたんですけどね」とは泰子さん。
安売りの大型店と競合するよりもと、下駄や草履に特化したのだとか。
今では珍しい下駄・草履の専門店は、すみよっさんのお膝元の粉浜商店街に、とっても相応しい気がする。
店内の壁にはズラリと“台”が並んでいる。
白木に塗り、鎌倉彫、樺細工などなど、実にいろいろあることがよく分かる。
「こうして様々な台を並べてあって、鼻緒も選べて、『おっちゃん、この鼻緒と、台はこれで作って』というのが戦後の下駄屋の姿。今は鼻緒を付けて売ってて、調整はできますよというスタイルが普通。うちもそうしてたんやけど」。
台はこれがいいけど鼻緒はあっちがいいなんてことが多いし、挿げ替えるなら最初から選べる方がいいよねと、戦後スタイルに、いわば逆戻りしたのだそう。
黒い点々の入った台がカッコイイなぁと見ていたら、
「これはごま竹。テレビのチャンバラ劇で、大店のダンナさんが履いてるやつ」とご主人。
「昨日のテレビで女芸人さんが履いてたのもこれやね」。
一瞬、映ればすぐ材までお分かりになるのね、さすがプロ。
「塗りの台は裸足で履いて汗の跡が残らないので夏用、白木は足袋を履く冬用に使うことが多いんですよ」とか
「台に左右はないので、歩きクセで偏りが出ないよう入れ替えながら履くことができて、その分長持ちするんよ」とか、泰子さんによる下駄や草履の豆知識が一つひとつ興味深い。
好奇心のおもむくまま、色々教わっていると、着物もないのに一足欲しくなる。
「下駄なら洋服に合わせてもカッコイイですよ」と泰子さん。
そういえば、先日の“着物deお散歩ツアー”で粉浜にいらしたご一行の中には、洋服に足元と羽織だけ和装にしていた小粋な方もいらしたな。
それに、「荒井さんの低反発草履は、全然足が疲れないので、なんぼでも歩ける」とかも仰っていた。
「ああ、これね」と出してもらった草履や雪駄は、確かにふんわり柔らか。
鼻緒も箱に山盛りある。泰子さん手作りのカラフルなオリジナル鼻緒もいろいろ。選ぶこと自体が楽しくて、好きな人は時間を忘れてしまうんだろうな。
台と鼻緒を決めたら、挿げ職人のご主人が、その人の足に合わせて挿げてくれる。ほんの10分ほどで完成。仕立代は無料!
荒井さんでは、ネット販売はされていない。ネットではサイズの微調整ができないからだそう。
履き心地の良さは、挿げ職人の腕次第。そこに矜持がおありなのね。
というわけで、ネット販売しない代わりに、できるだけたくさんの方に出会い、お気に入りの一足をゲットしてもらおうと、近年は、ハンドメイドのイベントや着物のフリーマーケットなど、全国におでかけ出店している。
そうして、全国にファンができるから、遠方からこの店を目指して来る人も多いわけだ。
「他所から来られる方に“こはま日和”をお渡ししたら、『この辺のことよく分かっていいわぁ』と喜ばれます」と泰子さんから嬉しいお言葉。次号も周辺情報満載でお届けしますね!
イベントなどでちょくちょくお休みされるので、ホームページをご参照ください。
荒井はきもの店
1番街 9:30~16:30 お休みはHPにて。
更新のお知らせはLINEにて。
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「この取組みは大阪府商店街等モデル創出普及事業の一環で実施しています」
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