こはまの宝物 〜深掘りシリーズ〜『こころや』
構成・文/団田芳子
商店街の異空間。マニアックな着物好きの聖地
色とりどりの商品が並ぶ商店街の中で、モノトーンのシックな外観が異彩を放つ『こころや』さん。敷居が高いけど、中はどんなんかなー?と興味津々で潜入しました。
ガラスのはまった木戸を入ると空気が変わる。ふっと商店街の喧噪は遠のき、異空間に踏み込んだよう。呉服の『こころや』。
ちょっと前まで、レトロな町の着物屋さんという雰囲気で、子供用浴衣なんかも置いていたと記憶しているが。
「僕が継いだ当初は、そんな感じでしたね」と、5代目・名倉克典さん。
明治19(1896)年、西区で糸屋を始めたのを源流に、大正年間に中崎町の本庄公設市場へ。
「普段着の着物とかを扱ってたんやないかと思います」。
昭和26年 こころや株式会社開設。天王寺を経て、昭和33年、粉浜商店街に店を構えたという100年を超える老舗。
2001年に、家業を継いだ5代目は、武蔵野美術大学を卒業し、歌舞伎の衣装のお仕事やインテリアデザイナーとしての経験も積んできたという経歴の持ち主。
「昔からお芝居や伝統芸能が好きでねぇ」と、はんなりした口調は、いかにも呉服屋さんって思うのは、こちらがイメージにハメ過ぎかしらん。
20数年前にお隣まで間口を広げ、2019年、今のモダンなスタイルにリニューアル。ちょっと入りにくい雰囲気を醸し出しているけど、「僕も人見知りやし…」とトボけた味わいの名倉さん。
「たとえば、街場の寿司屋がお客さんの要望でええネタを出すようになって、するとお客さんも店も口が肥えていき、ネタケースを置かない高級寿司屋に育つというのがあるでしょう。あの感じ」というたとえは、食べ歩きがお好きな名倉さんらしい。
つまりは、レトロな町の着物屋が、商品を絞り込んで、アーティスティックな雰囲気に変わったわけだ。
店内は、入って右手に、木綿の着物などカジュアルなラインを。そこに合わせる個性的な帯は、商店街側の棚。インドネシアのエスニックな柄など、ユニークなものがいっぱい。
左手には、作家物やオールハンドメイドの高級ラインが並んでいる。
門外漢にはよく分からないけど、もの凄くオシャレでモダンでスタイリッシュな品揃えなのだろうことは分かる。
「僕の好きなものだけ置いてるんです。僕自身マニアックやしねぇ」。
きれいなものに囲まれて育って、審美眼が備わっているのだろう。その上に、勉強も欠かさない。
「昨年は西表、石垣、沖縄に織物を見に行ってきました。織り方、特色を学んでから発注したいから」。
カラフルな品の中で、逆に渋さで目を引いたのは葛布帯。
「山野に自生する葛の蔓からとった繊維を糸に」織物に仕立てたものだとか。透明感と光沢が何とも不思議な魅力を放っている。
かと思えば、「これは西陣織りのネクタイの生地を組み合わせた帯ですね」という面白いものも。
「ここには、着物好き女子の夢が詰まってるんです」。
基本は誂えで、名倉さんの採寸が上手だと評判だ。さらに、合わせ方なども、ステキにアドバイスしてもらえると喜ばれている。
また、歌舞伎役者さんや人間国宝さんなど伝統芸能関係者にご贔屓が多いらしい。
「僕がその世界が好きやから、話が通じると口コミで広がったんかなぁ」。
お祝い返しに芸人さんが誂える手ぬぐいも扱っている。
「注染という染めの技術は明治時代に大阪で始まったんです。プリントとは違う味わいがありますよね」と、見せてくださったオリジナルてぬぐいは、名倉さん自身がデザインを手掛けている。
たこやき、「笑」、通天閣、お好み焼きのてこ、初辰猫さんなどをモチーフにした「大阪」シリーズは本当にキュート。
てぬぐいは、大阪ミナミのお土産ショップ「いちびり庵」や、吉本興業の「なんば花月」で購入可能。
5番街 10:30~18:30 お休みは水・木曜
出張イベント多数で臨時休業も多いので、
HP(http://www.cocoroya.com/index.html)を参照。1年間の予定が掲載されている。
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